第22章 はぐれた心の先に…(13)
信長様が家臣に合図を送ると、項垂れた二人を外に引っ張り出し広間から姿を消した。それに続くように広間の下段に居た人達も、部屋から出て行く。
「どうゆう事ですかっ!?」
「まさか、光秀さんがっ!」
そして、家康と私はほぼ同時に声をあげた。
「今回の件も、顕如が裏で関わっていたからな……光秀を送り込み早急に手を打つことにした」
秀吉さんの話を聞いても私は相変わらずピンとこなくて、首を傾げる。
でも家康は瞬時に理解出来たみたいで……
「……つまり。俺を使って信長様の首を取る隙を探してたってことですね?」
「まぁ、そんな所だろう。お前に熱を上げている築姫なら喜んで協力すると踏んだんだろうが……」
ひまりの存在が誤算だったのだろうな。出世を焦るお前なら、同盟の話にすぐ食いつくと……
「……前のお前ならとりあえず同盟を結び、国を乗っ取った後、同盟を解除して離縁すれば良いだけのこと。それぐらいの野心はあっただろうが……」
信長様は話を途中で止めて、私の方に視線を向ける。
「なるほど」
「それさえも嫌なぐらい、ひまりの事を……」
秀吉さんと政宗は、私をまじまじと見た後、今度は家康の方へ視線を動かし何か言いたげにニヤついた笑みを浮かべる。
「それさえも??」
その言葉の意味が解らず、思わず家康の方に視線を向けると……
「ひまりは知らなくていい」
目元を赤く染め、バツが悪そうに家康は言う。
(多分、話が解ってないのは私と三成君だけなんだろうなぁ…)
同じように首を傾げる三成くんを見て、私は少しだけホッとした。
「……まぁ詳しい話は後だ」
先に二人で話をして来い。
信長様はそう私達に言うと、早く行けと言うように手を振る。家康はもう一度、信長様に向って頭を下げると……。
「行くよ、ひまり」
「……はいっ!」
手を握ったまま、私達は走り出す。
振り返った時に、信長様が一瞬微笑んでくれた気がして……
涙が一気に溢れた。
家康の手の暖かさが
心にも身体にもじんわり伝わって……
私は今度こそ離れないように、
ギュッと握り締め
あの日の忘れ物を取りに……
真っ先にあの場所へと
走り続けた。