第160章 あなたにもう一度後日談(7)あとがき2
安土城から御殿に戻り子供達を寝かしつけた後、荷物を整理する。
「三成も、あのじじ馬鹿もほんとに……」
「ふふっ。ねぇ、家康?これって金平糖が入ってた箱だよね?」
ぶつぶつと隣でさっきから独り言を言っている家康。普段から聞き慣れている私はクスリと笑い、ある箱について尋ねた。
昨夜、見た箱と色が違う小さな箱。
蓋を開ければそこには黒紫色の金平糖が五粒だけ入っていた。私はそれを見て首を傾げる。まるで高級品のような扱いの金平糖。不思議に思ってじーっと凝視していると……ふわっと前髪が触れ合った。
「ん?……あっ、また忘れてた。食べるから貸して」
「え?また?う、うん」
何となく嫌な予感がした気がしたけど、私は差し出された手の上に箱を乗せる。
ぱくっ!
家康は半ばやけくその様に全て口の中に放り込んだ。
カリッ、ゴクッ。
(お腹でも減ってたのかな??)
甘いものを自ら食べるのは珍しい。ふと、疑問に思うこともあったけれど、私はそれ以上何かを尋ねることはなく、再び荷物の整理に取り掛かる。
風呂敷包みを開けて、その場に並べてゆく。
(お饅頭は女中さんや家臣さんで皆んなで食べて貰う用で。後は〜〜)
「ひまり」
「ん〜?なぁに?」
名前を呼ばれ、
私は背中を向けたまま返事をする。
すると背中にぬくもりが伝わり、次の瞬間……凄い勢いで視界がくるっと反転した。