第156章 あなたにもう一度後日談(6)後編
「みちゅなり!」
「はい、時姫様」
可愛らしい呼び掛けに応える私。
「いっちょ!」
「……勿論です。みちゅなりはずっと貴方の側に居ますよ」
これからも、ずっと。
貴方の成長を、願うならば一番近くで……一人の男として、見守らせて下さい。
貴方の隣に素敵な人が現れる
その日が来るまで……。
もし許されるならば、ほんの少し夢を見ても、構いませんか?
出来るなら
そのお相手が……
ーーーーーーーに、と。
鷹狩りから戻られた信長様に呼ばれ、私は時姫様と手を繋ぎ広間の襖を開いた。
「信長様、御用とは?」
一礼し跪坐く私に、信長様は何故か鋭い眼差しを突き刺した後、隣にいる時姫に向かって手を広げ、
「時姫〜じぃじの元へ来い」
その鼻音声に身が凍りつく。
だ、誰ですか……。
この人…?
(も、もしや信長様の面を被った影武者では!?)
私は咄嗟に鞘に手を添え、時姫様を背中で庇うように立ち塞がる。
「……ほぉ。三成。良い度胸ではないか……地獄に堕ちたくなければ、俺の時姫をさっさと渡せ」
「あれ……?可笑しいですね?これは信長様御本人。では、先程の影武者は一体どちらに……?」
私は不思議に思い、辺りを見回す。
「……三成。影武者など居ない。とりあえず黙って慣れるしかない」
(???)
側に仕えた秀吉様にそう言われてしまい、腑に落ちない気持ちで再びその場に畏まった。
「じぃじ〜」
「おぉ〜♡何しておったのだ?じぃじが居なくて嘸かし淋しい思いを……」
「だっ、こ!だっこ!」
「そうか、そうかぁ〜」
自分の元へ駆け寄る時姫様を、もう目に入れても痛くないと言うように、可愛がる信長様。
「わ、私は夢でもっ!!?」
目を疑う光景。
「心配するな。……その内慣れる」
時姫様……。貴方はあの赤鬼と呼ばれる方さえ、虜になさるのですね。
「何と素晴らしい方なのでしょう!」
「あの様子だと暫くは、駄目だな。要件は今朝話した姫君の事だ。もう直ぐ到着するとつい先程連絡が入った」
門前まで出迎えを頼む。