第153章 あなたにもう一度後日談(5)一日目の夜 後編※R18
家康が探し回っている間、ひまりは河原で会った風太から事情を聞き、宿に辿り着いて居た。
「まさか、あの綺麗な女の人が男の子だったなんて……勘違いして、やきもちなんか妬いちゃって///」
ひまりは真相をようやく知り、恥ずかしそうに俯く。
「僕の方こそ調子乗ってすいません。家康さんの焦る姿が面白くて、つい悪ふざけをしてしまって」
風太は自分は呉服屋の息子で、五年前にこの都に来て今は女形専門で舞台に出ている事を話した。
「えっ!なら十歳の時から一人で都に来てたの??」
風太の年齢を先に聞いていたひまりは、驚く。
「はい!どうしても役者になりたくて、父の友人である今の師匠の所に弟子入りしました」
風太は熱く語りながら、弟子入りした当時の話や稽古の話をする。ひまりは、時々相槌を返しながら大きな夢を叶えようとする少年の話を、温かい目を向けて真剣に聞いていた。
「今日の舞台も少し出てたんです。でも……花形を務めるようになるのはまだまだ先ですね」
「でも、凄く綺麗だったよ!私なんかより全然色っぽくて、仕草も声も本物の女の人だったし!」
すぐ、売れっ子になるよ!
ふわっと笑うひまりに風太は思わず見惚れ、照れ臭そうにはにかんだ後、ふとある事を思い付き、ポンと掌の上で拳を一つ打つ。
「二人に迷惑かけたお詫びに、素敵な夜になるようにお手伝いさせて下さい!」
「素敵な夜??」
首をかしげるひまりに湯浴みをしてくるように進め、風太はその間に旅館の女将にあるモノを借りに向かった。