第153章 あなたにもう一度後日談(5)一日目の夜 後編※R18
俺は風太と別れ手当たり次第、ひと気のない静かな場所を探した。
しかし何処にもひまりの姿は無く、手のひらの汗までわかるぐらい焦る。やきもきしていても仕方ない。急いで他の場所をあたるしか……。
そもそも何でこんな事に。
ーーごめんなさい。
あの時、謝らせるつもりなんて無かった。
着物をぎゅっと掴んだ姿が浮かび、後悔が襲う。いつもなら、言い返してくるぐらい元気があるのに今日のひまりは、反論なんかせずすぐに謝った。
理由は一つ。
(きっと、喧嘩したくなかったからだ)
水入らずの時間を大切に思って。一緒にいられやる今を大事にしたかったはず。
「はぁ……何やってんの、俺は」
口から重たい息が出る。
風太は女形役者であり、呉服屋の息子だ。だから、どうしてもひまりに紹介したかった。きっと、喜ぶだろうと思って。
(自分より十も年下の男に、本気でキレるわけにもいかないし……)
ひまりが自覚なくて、危なっかしいのは何時ものことだ。そもそも、つまんない意地はって手を繋がなかった俺が、一番悪い。
ーー家康!大好きっ!
朝からずっと甘えて、ずっと笑ってた俺の大事なお姫様……。
(何処にいんの……)