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イケメン戦国〜天邪鬼な君へ〜

第153章 あなたにもう一度後日談(5)一日目の夜 後編※R18




ひまりの背中が遠ざかるのを見て、俺はギロッと睨みつけながら視線を横に移す。


「旦那様のような素敵な方でしたら、水揚げ代お安くしますからぁ♡」


調子に乗ったのか、更に猫なで声を出し赤い紅を付けた唇を突き出してくる。




「風太!良い加減にしろよ!ひまりが勘違いしただろっ!!」




俺は腕を思いっきり振りほどき……怒鳴った。



「ふぇっ!あれ!居ないっ!……あちゃー。ちょっとからかうつもりだったんですけど。……でも、僕の演技力もなかなかでしょ?」


風太は得意げに鼻を鳴らす。

今はこいつの相手をしてる場合じゃない。
俺は急いでひまりを追いかけた。



(く、そっ!どこにっ……)



こんな事なら楽屋まで連れて行けば、良かった。役者の男ばっかり居るから入れたくなくて、つい一人で待たせてしまい……そんな変な心配するから余計に……ややこしい事に。



背を向ける前に一瞬だけ見えたひまりの顔は、今にも泣きそうだった。


絶対、誤解したに決まってる。


俺は人混みを押し退け近づいてくる女を蹴散らし、気持ちばかりが先走るように焦り……赤い提灯が並ぶ道の左右に向けて、首を動かす。

只でさえひまりは危なっかしいのに、この都の夜に一人で居るのはかなり危険だ。


俺は一旦歌舞伎座の入り口に戻り、着替えを終えた風太の肩を掴む。


「ひまりが何処にも居ない!探すの手伝ってくれっ!」

「勿論手伝いますよ。そのつもりで着替えたんですから。……責任は僕にありますし」

「当たり前だ!ひまりは自覚ないし、危なっかしいし……もし変な奴らに連れてかれたら」



俺は自分で言っておきながら、背筋に嫌な汗がスッーと流れる。



「……大丈夫。僕、女形なだけあって女心は承知してますから。こんな時はきっとひと気の少ない場所か河原にでも居ると思います」

「なら、俺はひと気の少ない場所あたるから、河原の方を頼む!」




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