第151章 あなたにもう一度後日談(5)一日目の昼
都の人集りはまさに想像以上。昼食を終えた俺達は逸れないようにしっかり手を繋ぎ、都の中心部にある長い橋を渡る。
「すっっごい!大っきな川!!」
「……流石、都だね。規模が違う」
真ん中で一度立ち止まり、興奮気味に橋の手摺に寄りかかるひまり。真冬の陽が静かに降り注ぐ中、口から白い息を吐きただじっと川を見つめていた。
「何、考えてるの?」
その横顔に見惚れ、俺は背後から囲むように両手を手摺に預けひまりの頭に頬を寄せた後、そうそうと流れる川を見下ろす。
「……あの時の事。ちょっと思い出してたの」
あの時?と、聞き返すとひまりは視線を手摺に移し、俺が築姫のことで信長様に呼び出された時の事だと言う。
「あの時ね。城下町を歩きながら、家康とデート出来たら良いなぁ〜って考えてて……」
ひまりは前に視線を戻しながら話し、待ち合わせの橋で夕陽を眺める俺を見た時の事を話す。
「その時の横顔が凄く綺麗で……胸が熱くなって、ドキドキした」
凄くね……。そう言って、睫毛を伏せた。
「……男に綺麗は余分だし」
俺は髪に口づけし、手摺に置いてある自分より小さい手に触れる。
「……あの時。夕陽を見ながらひまりの事……ずっと考えてた」
「えっ……?私のこと?」
ひまりが振り返る前に抱き締め、笑顔で帰したかったこと。傷つけるつもりはなかったこと。手離したくなかったことを話す。
「……遠くに連れ去ろうか一瞬、本気で悩んだし」
「ふふっ。今、思えば私達。本当にすれ違ってばかりいたね」
そんな話をしながら寄り添い、二人で冬の川をしばらく見つめた。