第151章 あなたにもう一度後日談(5)一日目の昼
都に人気の歌舞伎座があると聞き、馬の上でじゃれ合いながら俺達は向かっていた。
「わぁっ!見えてきた都!」
「あっ、こらっ!急に動いたら危ないっ!!」
俺は前に体重を傾けるひまりの腰を掴み、自分の方に引き寄せる。
「てへっ。ごめんなさぁい」
可愛らしく舌をペロッと出すひまり。
「ちゃんとくっ付いてないと、落ちるよ」
俺が口を尖らせて言うと、甘えるようにぴとっと俺の胸に頬を擦り付け、もじもじと動く。
「家康と二人きりだと、つい嬉しくてはしゃいじゃって……///」
ひまりはそう言うと今度は顔を上げ、もう一度ごめんね?と、言いほんのり染まった頬を両手で隠した。
(な、なにこれっ。もう、まぢでやばいんだけどっ///)
久々の夫婦二人きりだからか母親としての姿は一切見せず、照れながら甘える姿にさっきから俺の心臓がやばいぐらい煩い。
「もう、お願いだから都に着いてもずっとくっ付いててよ!」
俺は思わず手綱を離し、
ガバッとひまりを抱きしめる。
「い、家康!……手綱放しっ…やぁっ///くすぐたいっ///」
俺はちゅっ。と音を立てながらひまりのおでこやほっぺたに口づけを数回。
「………馬の上でしたら怒る?」
「だ、駄目!///」
「……ちょっと、だけも?」
「駄目だってば!///」
「……なら、本当に本当にほんのちょっと?」
「もぉ〜///早く手綱持ってくれないと本当に落ちる〜っ!」
俺は渋々諦め、再び手綱を取り都へと到着した。