第150章 あなたにもう一度後日談(5)一日目の朝
雪が少し溶けて滑りやすい地面。私は転ばないように気をつけながら、小走りし、何回も家康と歩いた道や景色を楽しむ。
(ふふっ。何か本当のデートみたい)
私の心は踊り、足取りも自然と軽くなって弾んだ。
(……家康どこかな?)
辿り着いた場所で、キョロキョロと首を動かす。すると少し離れた石段の上でぼっーと石碑を見つめ座り込む背中を発見。私はゆっくりと忍び足で近寄る。
気づかれないように。静かに手を伸ばし、背後から家康の目元を隠す。
「だぁれだっ……!」
そして、
少し低い声を出し私は飛びつく。
「……ってか、隠す前から気づいてたけど」
「えっ??」
家康は目元を覆った私の手を取り……前を向いたまま、話す。
「でも、折角だから当ててあげる」
俺の可愛いお姫様でしょ?
ドキッ……。
(お、お姫様…って……)
もう、そんな歳じゃないのに……。
家康は振り返り、立ち上がる。
「ほら、正解」
花飾りに触れ、優しく微笑む姿に胸がドキドキして……高鳴る。
「……当てたんだからご褒美。頂戴」
家康は親指で私の唇に付いた紅を取り、ペロッと舐める。
「も、うっ。……折角、お洒落したのに」
「こんなの付けてたら、出来ないから駄目」
今日はいっぱいするから。
家康は早く、と言って指先で自分の唇を指す。
「そんなの、ご褒美にならないよ?」
「……知らないの?ひまりからして貰えるなんて、最高のご褒美だから」
私は背伸びして腕を絡ませ……
目を閉じた。