第150章 あなたにもう一度後日談(5)一日目の朝
ことの始まり___
それは、今朝の出来事から振り返る。
(………何、今の夢)
野原に子供が二人。不思議な夢にしばらく頭がついて行けず……呆然と天井を眺める。
ふと視線を横に向ければ俺の腕に頭を乗せ、スヤスヤ眠るひまりの姿がそこに。
(おはよ……。お姫様)
昨夜の営みのせいか……ひまりは全く起きる気配はなく可愛らしい寝顔を浮かべ、小さな寝息を立てている。
(……まだ、暫く寝ててよ)
心の中でそうお願いし、前髪を掻き上げそっと額に唇を落とす。
この可愛い寝顔なら、一日中見ていたい。
(頑張って作ってくるから)
けれどその誘惑に負けないよう、俺は着替えを済まし、急いで準備に取り掛かった。部屋から出て薬剤を調合する部屋へ真っ先に向かう。
「家康様、薬草や生薬お持ちしました」
そこで待っていた家臣から、カゴを受け取る。昨夜、急遽、頼んだのにも関わらず全て取り揃えてくれたらしい。
俺は労いの言葉を掛け、礼を言う。
「助かった。もしひまりが起きたら出掛ける準備をしとくように伝えて」
「はっ!」
「あと、準備が終わったら………」
ひまりへの伝言をもう一つ頼んだ。
家臣が出て行った後、机の上に薬研とすり鉢を用意し急いで薬の調合を始める。
(まずは、ひまり専用から作って……次に俺、専用)
俺は朝早くにも関わらず上機嫌で薬研を転がし、最後にその粉を水で溶かし込み蜜を作る……箱から取り出した小さなモノに絡め、十分に乾かせた。
(完成っと)
出来たのは、桃色の金平糖と黒紫色の金平糖。
(効果は、解らないけど……)
夢の世で、成分や効果を最大限に学んだ知識を生かしきった……!はず。今夜じっくりひまりに試させて貰うことにし、浮き立つ気持ちで待ち合わせ場所へと向かった。