第148章 あなたにもう一度後日談(4)後編
天守からまだ明るい光を灯す城下町を見下ろす。
竹千代は俺の隣に座り、鼻歌を口ずさみ射的で手に入れた景品を一つ一つ並べ、嬉しそうに笑っていた。
「これは、母上の分!こっちは時姫の分で……父上の分!!」
床の上にはじき、お手玉、竹とんぼ……そして最後に竹千代は赤い駒を置いた。
「なら、これは貴様の分か?」
俺は、赤い駒を手に取る。竹千代はニカッと笑い、首を振った。
「それは信長様の分!!」
「……俺の?」
「赤は信長様の色であるし、それに今日沢山遊んでくれたお礼に!!」
それでは自分の分が無いではないか?と、俺が聞くと竹千代は代わりに今度、その駒で一緒に遊んで欲しいと言う。
「……貴様は母親にも、似ておるな」
自分はそっちのけで、すぐに周りの人間ばかり気に掛ける優しさと、温かさを届けてくれる。
(家康には、たまに駄々を捏ねてはおるがな)
それも可愛らしい要望ばかりだ。
俺は竹千代と共に時姫が眠る褥に入ると、父親の昔話をして欲しいとせがまれ思わず喉をクッと鳴らす。つい最近、母親にもそうせがまれたばかりだ。と俺が言うと竹千代は照れ臭そうに笑い……頬骨をポリっとかいた。
「父上と母上は、今日一日どのように過ごしておったかの?」
「……大方、想像は出来る」
人目も気にすることなく終始寄り添い、昔のよう過ごしておっただろう。
また、その話は二人にして貰え。
目を閉じる竹千代と時姫の頭を撫で、俺も珍しく眠気に襲われ……夢を見ることもなく朝方まで目を閉じていた。