第147章 あなたにもう一度後日談(4)中編
城に戻る間、竹千代は今朝枕元に置かれていた守り刀をただじっと見つめ……鞘に彫られた徳川家の家紋を指でなぞり、大切そうに胸の前で抱えていた。
(家康……ただ贈るのではなく持たす意味を教えていけ)
まぁ、彼奴の事だ。恐らく竹千代自身に見つけさすつもりなのだろう。
「……怖かったか?」
震えていた事を思い出し、竹千代にそう問うてみる。徳川家の跡取り息子とは言え、まだ歳は五つ。あのような場に出くわすのも恐らく始めてであっただろう。恐怖に感じたに違いない。泣き出さなかっただけ十分、勇敢だ。
すると返ってきた意外な言葉。
「……時姫を失うのが一番怖かった。だから、絶対に守らないといけないと……」
(……やはり、親子だな)
俺はフッと息を吐き感心する。
人を守る為に刀を振るう強さ。
それは、俺にはない家康の強さだからな。
「……今夜の冬季祭りは縁日の出店が並ぶ。たまには子らしく存分に遊ぶと良い」
「うんっ!!射的に型抜き……夜が待ち遠しい!!」
ひまり達と以前行った縁日の話をしながら浮かべた笑顔。それは、やはり年相応の眩しいものであった。