第147章 あなたにもう一度後日談(4)中編
茜色に染まる空。
再び馬に跨り、城へと向かう途中。
(……誰か、付けておるな)
俺は気配を感じ取り……孫を危険な目に合わす訳にはいかん。そう思い手綱を強く叩きつけた。
すると矢を放つ音が聞こえ……。
「竹千代!!手綱を持て!」
「えっ!」
俺は早くしろと言い、時姫を羽織の中に隠し刀を抜く。
飛んできた矢を真っ二つに切りつけ、足音を聞き次の攻撃に備える。
(数はそれ程、居ないようだな)
流れ者の野党が何かか……。
「の、信長様!!」
「案ずるな、俺は天下人だ。野党如き敵ではない」
馬の行く手を阻むように姿を現した野党。
俺は竹千代に、時姫を必ず守るよう。戦いを絶対に見せるなと告げ、馬から飛び降りた。
「ふんっ、何が目的か知らんが……大事な水入らずの時間を邪魔をしおって。それなりの覚悟であろうな?」
「覚悟をするのはお前の方だ。やれっ!!」
取り囲むように野党は俺に向かって、飛びかかる……まだ幼き孫に血を見せたくない。
俺は鞘で一撃を受けた。
「貴様ら如き、刀を抜く必要はない」
足で思い切り蹴り上げ素手で攻撃をかわしながら、鞘を振り回す。そして、瞬く間に地面に転がる三人の野党に近寄る。
「うっ……く、そっ。は、やく殺せ」
突き刺すように視線を向け、
転がった武器を蹴り飛ばす。
「孫のお陰で、命拾いしたな」
最後に蹲った男達の腹を蹴り、俺は再び馬の元に戻ると……震えながら守り刀を持ち、羽織を被った時姫を胸に抱く竹千代の頭をそっと撫でた。
「しっかり守れたではないか。良くやった」
「……信長様。……ど、うして刀を……」
「……ただ、刀を振るだけが強さではない。まだ幼き者に無駄な血を見せないのも強さだからな」
馬に跨り、そっと時姫に被せた羽織を取ると安らかな寝顔がそこにはあり……俺は口元を綻ばせる。
「風邪をひいてはいかん。城に戻るぞ。夜には城下町に出店が並ぶ。少し身体を休めてから参る」
そう告げた。