第19章 はぐれた心の先に…(10)
ーー揉み合いになりかけた時に、大事な何かを落としたようで……。
ーー一瞬だけ見えたのですが……多分耳飾りか何かだった気が……。
ーー…っ、…あの河原は夜になると……家康急ぐぞっ!!
俺のせいだ……
失くさないでよ。
俺があんな事さえ……
大切にするねっ!
ひまりさえ無事なら、
ひまりさえ笑ってれば、
それで良かった。
それ以上、何も望まない。
あの笑顔が何処かで咲いているなら……
俺は……それだけで。
(急げっ!早くっ!!)
手綱を握る手に力がこもる。
ザァッッ……!!
ザァッザァッ……!!
降りしきる雨の中、夢中で走り続けた。