第19章 はぐれた心の先に…(10)
天守___
襖が勢い良く開き、飛び込むように部屋に入ってくる秀吉。
「失礼しますっ…っ!!」
秀吉はかなり取り乱しながら、息を整える暇もなく絞り出すように声を出す。
「ひまりの行方が解らなくなりましたっ!」
「なんだとっ!!」
俺は秀吉の話を聞き終えた後、
勢い良く立ち上がり、声を荒げる。
「馬を出せっ!俺は、家康の所へ向かうっ!」
他の者に、ありとあらゆる場所を探すように命ずると早足で門に向かった。
呉服屋の亭主によると、
確かに夕刻前には店を出たと。
(……反物の送り主が家康と知ったのなら、会いに行っている可能性が高い)
今にも降り出しそうな空を見て、急いで馬に飛び乗る。微かな嫌な予感を振り切るように、俺は手綱を力強く振り続けた。
ひまりが呉服屋を出てから既に……
一刻以上の時が過ぎていた。