第17章 はぐれた心の先に…(8)
この店で初めて女性物をご所望された時は、本当に驚いてしまって……
そう、切り出された話。
この前はその時買われた、
耳飾りに合う反物をと、
それはそれは真剣に選ばれて。
続く話に……
ーーお前が毎晩泣いている事を話したら少しでも気が紛れるようにと、置いていった物だ。
私は信長様の言葉を、思い出す。
ご主人が教えてくれた。
大切な人の贈り物だからって。家康が吟味して私への耳飾りを選んでくれたことを。
ーーあのようにお優しい表情を浮かべる家康様を、今まで一度も見た事はありませんでした。
それから最後に、
そう言って微笑んでくれた。
この時、私は知る。
今着ている着物の反物が……
家康からの贈り物だった事を。
そして、この時は少なからず
私が家康を想うように
家康も私のことを
想ってくれていて……
辛かったのは、
私だけじゃなかった事を
知った。