第17章 はぐれた心の先に…(8)
お使いを頼まれた私は、この前仕立てばかりの着物を着て、ある店へと向かう。
(この橋を渡ればいいんだよね)
私は手に抱えた風呂敷を、落とさないように気をつけながら橋を渡る。そして、渡り終わるともう片方の空いた手で、懐に閉まってあった地図を取り出した。
一旦足を止め、目的の呉服屋を探すためキョロキョロと辺りを見回す。
(たぶん、この辺りにあるはずなんだけど……)
仕立てた着物を届けに、城下町に来たのはいいけれど。
街並みに慣れていない私は三成君が書いてくれた地図を頼りにそれらしい場所まで辿り着く。
「えっと、この角を曲がって……あっ!あった!」
ようやく見つけたのは地図に書かれた店の看板。敷居の高そうな佇まいに、少し緊張しながらも恐る恐る店の中へと足を運ぶ。
「お忙しい所失礼します、仕立てた着物のお届けに参りました」
「店の女将でございます。ご足労かけてしまって、すいません。しかもこんな可愛らしいお嬢さんに来て頂いて……」
優しそうな女将さんに、一気に緊張感が解れる。「今、主人を呼んで来ますから、しばらくお待ち下さい」と言われ、私はその間少しだけ店内を見て回る。
「あっ!この柄可愛い……でも、こっちの柄も……」
すっかり夢中になって眺めていると、奥から女将さんと一緒に男の人が出てくるのが見えて、私は慌てて頭を下げた。
「お城の使いで来ました、ひまりと申します」
そう言ってから顔を上げると、ご主人らしき男の人が何故か凄く驚いた目で、私を見ていて……
「その着物はもしや……」
(えっ?着物?)
どこか変な所でもあったかな?と、思わず自分の着ている着物を見てみる。けれど、特に着崩れたり気になるような所が見当たらなくて首を傾げていると……
「……あなた様でしたか」
「えっ………」
ますます首を傾げる私に、立ち話もあれですので。と言って、私を店の奥に案内してくれた。