第92章 あなたにもう一度(8)
「竹千代と二人にしてくれ」
「……解りました」
俺は天女が部屋から出ていくのを確認し、奥深くに隠してあった箱を取り出した。そしてその中の一枚だけ懐に仕舞うと、竹千代の前にその箱を差し出す。
「……父上、これは?………!!な、何故こ、この中に母上がおるのだっ!!」
俺が箱の中の物を見せると、竹千代は驚いた声を上げ目を皿のようにして、写真の中で笑うひまりを見る。
「……これは、俺の大切な物だ。お前が立派な男になり、どんな事でも受け止める強さを持った時、約束通り全てを話す」
だから、その日までこれを預かって欲しい。竹千代にこの事は男同士の秘密だと伝え、俺がひまりを迎えに行く間城の主を代わりに勤め、時姫の面倒を見るように頼む。
「……母上は困ったお姫様だから、放っておくとすぐ道に迷う」
それに贈り物が大きいと一人では、持てないからな。と言うと竹千代は小さい手を両方握りしめ、まるでひまりの真似をするように気合いを入れると、元気良く頷いた。
「では、行ってくる。……約束忘れるな」
「はいっ!!」
部屋から出る。すると天女が真剣な表情を浮かべ、俺に近づく。
「……真実を知った時、必ずあなた様は私の元に来るでしょう」
ここでずっと、お待ちしております。
最後に意味深な言葉だけを残し、部屋の中へと姿を消した。