第92章 あなたにもう一度(8)
宴を予定より早めに終わらせ政宗さんから事情を聞いた後、再び倉庫に向かい扉に背中を預け、微かに聞こえる物音に耳を澄ます。
けれど、結局ひまりは一度も部屋から出てくる事がないまま……日が昇り始め……俺は部屋に戻りひまり宛に文を書き扉の隙間に挟むと、重い足取りで仕事に向かった。
泣き叫ぶ声が隔てた扉の向こう側から聞こえた瞬間、身体がバラバラに斬りつけられるような劇痛が走り、どんな拷問より酷い地獄に思えて……
(気が狂うかと思った……)
ひまりにこんな思いをさせた自分なんか、今すぐ消えたらいい……心底そう思った。
足軽の訓練の指導を済まし、一刻も早くひまりの元に帰りたくて、今すぐ腕の中で全部受け止めたくて……俺は夕日で赤く染まった空に見向きもせず、ひたすら馬を走らせた。