第91章 あなたにもう一度(7)
暫く泣き続けた後、私はふと思い出しこの倉庫にある嫁入り道具箱の一つから、仕舞い込んだ物を取り出す。
この世界に戻る時に、向こうの世界で作った衣装……まるで天女が着ているような、衣の羽織。
(……これを纏い、時の世界を飛び越えた)
私はそれをぎゅっと胸に抱く。そして懐から櫛を取り出し、永遠の愛を約束した日の事を思い出す。
(行かなきゃ……)
自分の気持ちを取り戻しに。
家康の気持ちを見失わないように。
私はそう決心。そして、朝が来るのを冷たい床の上でひたすら待った。
カチャッ……キキッー……。
朝日が微かに倉庫の中に入り込み、
私は鍵を開け扉をゆっくり押す。
(あれ……?さっき何か落ちたような……)
扉を開けた瞬間。何か白い物がひらひらと舞い、床に落ちるのが見えた。そして首を左右に振り、家康の姿がない事を確認すると私はそれを拾い上げる。