第13章 はぐれた心の先に…(4)
針小部屋___
「素敵な柄のお着物ですね」
「ひまり様にきっと、お似合いになると思いますよ」
昨夜の反物で仕立てた着物を広げると、針子仲間の皆が次々に褒めてくれる。
夢中になって仕立ていたらすっかり、夕暮れになっていた。
(……時間経つの、早いなぁ)
集中して針仕事をしてると、何も考えなくて済むから一番良いのかもしれない。
「折角ですから、余ったハギレで何か他にも仕立ててみては?例えば、武運をお祈りしたお守りなんてどうでしょう?」
「武運のお守り?」
「はい!今、私達の間で流行なんです!……想いを寄せる殿方に、自分の着物のハギレで作ったお守りを贈るのが」
「無事に戦から戻れるようにと、ひと針ひと針想いを込めて」
(想いを寄せた殿方に……)
その言葉に胸がちくりと痛む。
真っ先に頭に浮かんだ家康の顔は、浮かび上がってはすぐ沈んでいく。
(でも……武運を祈るぐらいなら迷惑にはならないよね)
「折角だし、作ってみようかな」
「ひまり様からお守りを頂けるなんて」
「きっとその殿方、喜ばれると思いますよ」
事情を知らないからこそ、かけて貰えたその言葉が私にとっては一番の励みになる。
「おっ!……やけに盛り上がってるじゃねーか」
すっかり夢中になって、話をしていると突然部屋に政宗が入ってきた。
他の皆は、何の話をしていたんだと?と聞く政宗に内緒です。と答えるとそそくさと一礼して部屋から出ていく。
「……内緒か。まぁ、女が盛り上がる話は何となく想像できるけどな」
「ふふっ……それよりもどうしたの、突然?」
「ひまりが、此処に居るって聞いてな……少しは元気になったみたいだな」
その言葉の意味に一瞬言葉が詰まりそうになる。
家康の御殿に出入りが多い政宗は、多分事情を知っている。だからこそ、私は無理やり笑顔を作って返事をした。
そんな私を見透かすように、政宗は少し苦笑いをしながらいつも見たいに頭を撫でてくれた。
「……家康の事を話に来た。正直、今のお前に話すのはちょっと気がひけるが、何も知らない方が辛いと思ってな」
「……心配かけてごめんね。私なら大丈夫だよっ!大事な事なら話して欲しい……」
そう言いながらも、
私の身体は拒絶するように震えだす。