第12章 はぐれた心の先に…(3)
ひまりが出ていった後、
俺は書物を閉じる。
立ち上がって酒瓶を手に取り、
夜風を浴びた。
俺は木柱に背中を預け、盃に溢れる程の酒を注ぎ、一気に飲み干す。
ーーひまりの荷物は、これだけか?
ーー……はい。うちに来た時も身軽でしたから」
ーー……それにしても、珍しい形をしておる。これは皮製か何か…か…。
ーーその中に、反物を詰めてあります。針仕事が得意だと以前に言っていたので……俺の名前は伏せて渡して下さい。
泣き腫らしたひまりは違い、家康の目元にはうっすらだが隈の跡があった。
(……手のかかる奴らだ)
呆れて脇息に寄りかかったまま、首を軽く振る。
互いに打ち明けなかった胸の内。家康はひまりの想いに気づいたいた分、辛いであろう。そしてひまりは家康の想いは知らぬまま……不敏なことだ。
グイッと手首と頭を傾け、浴びるほどの酒を飲む。
眠気を誘う為だ。
丑の刻がまわった頃、
俺は浅い眠りについていた。