第90章 あなたにもう一度(6)
宴会が始まり、次々と広間には料理が並び始め俺は注がれた酒を口にする。
(………はぁ)
余興も始まり、一段と広間が騒がしくなり……思わずため息が出る。こういう類の集まりは、俺にとってこの上なく面倒でしかない。しかし親交を深めるには必要不可欠で、戦があまりない冬季の間に情報交換をしておく必要があるのは重々理解してるつもりだ。
(……気乗りしないのは、いつものことだけど……今夜は特に)
俺は視線を政宗さんの隣に向ける。
原因は解ってる。
「いやぁ〜お噂には聞いておりましたが、まさかこれ程までとは……」
「折角、ご挨拶に来て下さったのなら、一杯呑んでいかれては?」
「……でも私、あまりお酒は得意ではなくて」
「一杯だけですから、さぁさぁ」
しぶしぶ盃に注がれた酒を口に運ぶ、ひまり。さっきから何度もそう押し切られ、普段では考えられない量を口に運んでいる。
そのせいで、透き通った白い肌がほんのに赤く染まっていた。
(……しかも今夜に限って、髪あげてるし)
晒された白い頸が色香を増し、大名達の視線を一斉に浴びているのがここからでも嫌という程解る。
普段着ない色味の羽織を肩に掛け、化粧も心なしか濃い気がして……いつもより遥かに艶が出ていた。