第88章 あなたにもう一度(4)
徐々に霞んでいく視界に、何かが奪われる気がして……思わずその場にしゃがみ込んでしまう。
すると徐々に近づいて来る笑い声が聞こえ、咄嗟に木の影に身を隠す。
「ふふっ……竹千代様は本当にお元気で物知りでございますね。きっと、父上様のようにご立派な方になられますよ」
「本当か!?」
「はい。天女が保証いたします」
(竹千代……)
その声に再び涙が浮かび始める。
こんな近くにいるのに……
私が母親なのに……
どうして私は隠れているの?
「父上!立派になったら、約束必ず守って下さるか?」
(えっ………?)
「……あぁ。だから、しっかり言いつけ守れ」
「ふふっ……。それは、さぞかし楽しみですね」
「うんっ!」
(……つっ……!!)
私は必死に堪える。
なのに……
一気に涙が頬を滑り落ちてしまった。