第88章 あなたにもう一度(4)
私はおぼつかない足取りで、庭に向かう。気分が悪いわけじゃない。でも、何だか込み上がってきそうで思わず口元を押さえ、フラフラと近くにあった木に寄りかかる。
政宗は詰め寄る私に渋々話してくれた。この時代には武士には避けて通れない儀式があること。
そして、天女さんが……。
ーー……どうやら、家康を男にした女らしい。
政宗は話し終えた後、飽くまでも噂だから気にするな、と言って戸惑う私を落ち着かせる為、一旦台所から出した。
(……噂が例え本当でも、それは私が出逢う前の話で……)
今更何かを言うつもりなんて、これっぽちもない。
今は、私を大切にしてくれている……それだけで十分。初めて抱かれた時だって、自分が最初だなんて思わなかった。
いくら女の人に素っ気なくても、築姫みたいに家康に想いを寄せていた人は沢山居たはずだし……今まで恋人が居てもそれはごく自然のこと。
だから今まで、気にしたことは一度もなかった。
(違う……私が気になるのは……)
誤魔化した理由と、その人を選んだ理由……不安はその二つにある。