第88章 あなたにもう一度(4)
「……もしかして聞いたのか、あの女の噂」
「あの女って……もしかして天女ノ局様の事?」
他に話題になるような人が思い浮かばなくて、私は咄嗟にここに来て日の浅い、教育係の人の名前を上げる。
「あぁ。……まぁ、いくら出逢う前の話とは言え、流石に不安にもなるか」
(え………?)
身体がピタリと止まる。
噂?
出逢う前?
不安?
その言葉に
じわじわと何かが押し寄せ……
「まぁ……あいつは心配しなくてもお前しか見えてないからな。だ『何の話をしているの……?』」
へ?と驚いた顔をする政宗に私はゆっくり詰め寄る。
「……噂って……出逢う前って……」
あの夜の会話が蘇る。
ーー……実は俺も志願してきた理由は知らない。ただ……あの人は俺の……。
俺の??
「……一体何の話をしてるのっ!?」
あの時感じた微かな不安が、
私の中に一気に押し寄せた。