第87章 あなたにもう一度(3)
俺はひまりが寝静まった後、部屋から出る。
肌寒さをひしひしと感じながら、廊下の縁に片膝を立て座り込んだ。
(……誤魔化すつもりはなかったけど)
どうやって説明して良いか解らず、つい話題をすり替えてしまった。
(恐らく、ひまりが過ごした来世に元服なんて儀式は存在しないだろう)
前に20歳になったら成人式と言うものを挙げ、その日から大人として認められると言う話はひまりから聞いたが、単に着飾り、久々に友人に会って昔の事を懐かしむ……そんな内容だった。
しかしこの時代は違う。
一人の男として認められる為には、筆下ろしが必要。
(儀式の前の三ヶ月の間に、女と夜伽をするなんて話……)
いくらひまりと出逢う以前の話でも、流石に言いにくい。