第11章 はぐれた心の先に…(2)
安土城を出てから、俺は真っ先にひまりと待ち合わせている橋へと向かう。
(まだ、来てないのか……)
辺りをもう一度見回すが、ひまりの姿はない。
内心それにホッとする自分と、少し寂しいとも思う自分が居る……
俺はそっと、橋の手すりに身体を預ける。
赤く染まる夕陽を見ながら、城での話を思い出す。
「……確かに文の返事は一度も出してませんが……何でそんな話に繋がるのか俺には理解出来ません」
「女心程、恐ろしいものは無いと言うのを知らんのか?話に聞くとその姫、大分お前に熱を上げているそうだ。俺には理解出来ない、がな」
「……話になりません」
「俺にとったら別に如何でもいい話だ。ただ……お前には悪い話ではない。向こうの条件はただ一つ、姫を側室ではなく正室として迎えることだ」
(この前の失態を取り返すなら、同盟を組めと……)
自らの意思ではないが人質として暮らしていた俺と、目的は同じ。この乱世にはそんな事、当たり前のように溢れていて今更如何にかなるものでもない。
ただ……
頭の中にふっ、と何かが浮かぶ前に、俺は軽く首を振ってかき消す。
(……今は、とりあえずひまりを戻すのが最優先だな)
御殿に一旦戻れば、ひまりを返す決意が揺る。迎えを頼んである場所で、とりあえず時間を潰すしかない。
「……せめて、笑顔で」
帰したい。
ひまりと肩を並べながら、他愛のない話をしながら歩く。一生懸命に話をする姿を目に焼き付けたくて、真っ赤になりながら頬を膨らませる姿が、可愛いくて……
このまま、時が止まればいい。
心の底から、願った。
けれど