• テキストサイズ

イケメン戦国〜天邪鬼な君へ〜

第11章 はぐれた心の先に…(2)




「今夜、信長様の元に返す」



何で急にそんな事、言うの?


数刻前の出来事がまるで無かったみたいに、
冷たい口調で家康は言葉を続ける。


「浪人の黒幕が解った。もう、ひまりを預かる理由はない」


だから戻す。はっきりとした家康の声が、迷いのない真っ直ぐな瞳が、私の胸を容赦無く突き刺す。

理由は解る……

けど、どうして今言うの。


さっきまでの、優しい声は?


さっき、私を抱きしめたのは?


全部何も無かった事にするの?


御殿で一緒に過ごした日々も何もかも……

やっと気づいた想いを、伝える前に全部全部……


「……あと、多分黙っててもいずれ解るだろうから今、話しとく。近々、俺はとある大名の娘と婚姻を結ぶ。だから……」







もう御殿に来なくていい。






家康の気持ちが涙で見えなくなる。

家康の表情がボヤけて、全部解らなくなる。



「……話は済んだか?」



背後から信長様の声がして……

それと同時に家康は、掴んでいた私の腕を解く。

けど、今の私には振り返る事も、如何してここにいるのかも聞けなくて。


「……はい。後で女中にひまりの荷物を届けさせます」

「こんな時にもお前は冷静だな。いや、こんな時…だからこそ、か……」



ただ二人の声を何処か遠くで、聞いているようだった。


頭の中で必死に願う。

きっと何か他に理由があるんだよね?

明日になったらただの気まぐれだったって、いつもみたいにただの冗談だって……
そっぽ向きながらでも、素っ気なくてもいいから



言って。


私は肩にかけられた羽織を握りしめる。
微かに香る家康の匂いに、顔を埋めた……




/ 636ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp