第77章 約束の地へ〜おまけエピローグ2〜
「ひまりっ、ひまり!!」
俺は馬から飛び降り、縺れそうな足で
奥の部屋に向かって走る。
長い廊下にドタドタと足音が鳴り響き、その音を聞きつけた女中頭や腰元が襖の前に立ち塞がった。
「ここから先は、いくら家康様でも立ち入ることは出来ませぬ!」
「殿方はここでお待ち下さい!」
「ひまりはっ!ひまりの容態は!!」
取り乱し今にも襖を蹴り破ろうとする俺を、先に駆けつけていた政宗さんが羽交い締めにして止める。
「家康、とりあえず落ち着け!」
「おい。家康が入れぬなら俺を入れろ……命令だ」
「何、あんたも無茶苦茶な事言ってんだよ!」
背後から突如現れた幸村は、今にも襖に手を掛けようとする信長様を止め、俺達の目の前に佐助が屋根からスッと現れた。
「政宗は解るが、何故お前達がここに居る?」
光秀さんが訝しげに眉を潜め尋ねると、佐助はそろそろひまりが産気づく頃だと予測して近くで待機していた事を、平然とした顔で話した。
すると……
「あぁぁぁっ!!!」
突然、襖の向う側の更に奥の部屋からひまりのうめき声が上がり、俺は軽く自分を見失いかける。
「だ、大事なひまりが壊れるっ……俺のひまりがっ!!ひまり!!!」
「家康っ!お前が壊れてどうする!」
暴れ出す俺を政宗さんが再び、羽交い締めする。
「ひまり様は、今大事なお役目を果たそうとしております!!」
「父親となる家康様が取り乱して、どうするのですかっ!!」
ピシッ!!
女達はそう言って、襖の向う側に姿を消した。
「……ひまりの影響か?お前の所の女、気が強くなったではないか」
信長様は珍しく面食らったような顔でその場に固まり、そして俺と同時に襖に手を当てた。
『「ひまり…」』
「……おい、佐助。こいつら本当に戦国武将か?」
「ひまりさん……」
「って、おい!……ったく、佐助もかよ」