第76章 約束の地へ 〜おまけエピローグ1〜
「ほぉ、これは家康殿。あなた様の弓術の腕の評判は聞いております」
「ぜひ、お手並み拝見といきましょうか」
「……チッ」
俺は周りに聞こえないぐらいの音で舌打ちした後、弓を構え矢を的の焦点に合わせる。
耳を澄まして風の音を聞き、一瞬の静寂を創り……弦を一気に引く。
そして矢を真っ直ぐに放つ。
シュッ……
スパーンッ!!
「…ど、…ど真ん中!!これは素晴らしい」
「家康殿、お見事です」
「素敵ですわっ!」
「……邪魔」
大名達が手を叩くと同時に駆け寄ってくる女達を俺はあしらい、元居た場所に戻る。
「流石だな、家康。ひまりが見たら惚れ直すんじゃないか?」
「その前に、女に騒がれるお前を見てふくれっ面浮かべるぞ?」
「……なら、もう帰って良いですか?なんか今日は、朝から落ち着かないんで」
秀吉さんと光秀さんに後は任せます。
俺はそう言って弓矢を仕舞おうとした時、三成がこの世の終わりのような顔で、今にもコケそうになりながら走り寄ってくる。
「い、今、家康様の使いの方がいらして!!」
ひまり様が、産気づかれたと報告がっ!!
『『「なにっ!!」』』
俺は思わず持っていた弓を投げつけ、秀吉さんはずっと正座をしていたせいか立ち上がった瞬間、ずっこける始末。あの光秀さんすら、目を開いたまま固まった。
そして以外にも、一番意味不明な行動を取ったのが……
「こんな下らんことをしている、暇はない!!今すぐ参るぞっ!!」
自分が開催した接待なのも忘れ、そう声を荒げながら羽織を翻しその場から一目散に立ち去る第六天魔王だった。