第76章 約束の地へ 〜おまけエピローグ1〜
(ひまり!)
一瞬、自分の名前を呼ばれた気がして顔を上げる。
「どうした、家康?また、幻聴でも聞こえたか?」
「……いえ。それよりいつまで続くんですか、この下らない催しは」
内心、ひまりの声が聞こえた気がした事に胸を騒つかせながらも、俺は冷静な声を出す。
弓術の腕前を競う催しだと聞き、しぶしぶ参加を余儀なくさせられたが、誰一人まともに的を得るものも居なければ、只ひたすら酒を飲みながら脇に女を置き騒いでいるだけ。
(こんな、下らない事してる暇なんか俺には無いんだけど)
「接待も時には必要だ。身重の妻がいるお前を戦に行かす訳にもいかんからな」
たまには、こっちの仕事で役に立て。
「これのどこが接待なのか、理解出来ません」
その言葉に、俺は自分でも解るぐらい不機嫌になる。
さっさと終わらせて帰ろうと思い、俺は自分の弓矢を手に取ると、的の前へと向かう。