第76章 約束の地へ 〜おまけエピローグ1〜
(家康、もう安土城に着いた頃かな?)
すると、お腹から元気よくポコンッと叩く振動が伝わり、思わず目を開ける。
(ふふっ、代わりに返事してくれたみたい)
今朝、家康と交わした会話。
ーー今日は大名の催しがあって、帰りが遅くなると思う。
ーーうんっ。気を付けて行って来てね!
ーー……だから、今日だけは我慢して欲しい。
ーーふふっ、そんな事言ったら余計に産まれちゃうよ?
天邪鬼な家康の赤ちゃんだから。
私は針道具を片付け、早めに夕餉の準備をしようと思って立ち上がった……
次の瞬間。
「………つ!!!」
(なに、これ……)
突然波のような痛みが下腹部に走り、身体全体にじわじわとそれが広がる。
だんだんと痛みが激痛に変わり、そんな痛みが繰り返し押し寄せてくる。
(も、……だめ……)
暫くすると足に力が入らなくなって、近くにあった柱にズルズルと寄り掛かかった。そして同時に冷や汗が一気に吹き出す。
「ひまり様!!!」
(家康………)
カランッ……。
櫛が床の上に転がるのを見ながら、
私はその場に崩れ落ちた……。