第76章 約束の地へ 〜おまけエピローグ1〜
祝言を挙げ家康のお嫁さんになってから、約半年の月日が流れようとしていた。
私は大きくなったお腹を抱え、もうすぐ産まれる赤ちゃんを楽しみに、産着を仕立てながら窓の外に視線を動かす。
(今日もいい天気……)
小鳥のさえずりを聞きながら、針仕事で疲れた目を癒すように、瞼を閉じる。すると、祝言を挙げてからの月日がつい最近の事のように浮かんできて……ふと、家康から貰った櫛を取り出す。
そっと、それを握りしめ……私は再び目を閉じながら、思わず笑みが溢れた。
(毎日、本当に幸せ……)
祝言を終えたぐらいからお腹が膨らみ始め、体調も良くなってきた頃、家康は今の内しか出掛けれないからって、私を色んな場所に連れてってくれて……
それでも時々悪阻が酷い時があると、自分そっちのけで取り乱しながら介抱してくれた。
だんだんお腹が大きくなるにつれて、家康はどんどん優しくなって、毎日欠かさず私と過ごす時間を、必ずどこかに作ってくれた。
どんなに仕事が忙しくても、絶対に帰って来てくれて……あまり話す時間がない時は、わざわざ文を書いて渡してくれた。
たまにはゆっくり休んで、って私がお願いしても……
「折角の休みだから、ひまりと一緒に居る」の一点張りで。
皆んなも時々様子を見に来てくれるし、お城の女中さんや家臣さん達は本当に良くしてくれて……。
こんなに幸せで大丈夫かな?
って贅沢にも思ってしまうぐらい、幸せな毎日を過ごしていた。