第11章 はぐれた心の先に…(2)
幸と茶屋で他愛のない話をしていると、あっという間に時間は過ぎていた。
「もうそろそろ、行くねっ!」
「送ってかなくても、大丈夫か?」
「うん!来た道戻れば良いだけだから。またね、幸っ!」
私は、少しだけ歩く足を早め家康が待っている橋に向かう。
昼間より、少しだけ人の数が減った城下町に、ほんの少し寂しさを感じる。
(……確かこの橋だったよね)
辺りをキョロキョロ見渡すと、少し離れた所で、橋の手すりに肘を付きながら佇む家康の姿を見つける。
「い…え……」
後数歩という所まで近づいた私は、家康の姿を見て、言葉を失う。
ぼんやりと夕陽を眺める横顔は、私が知る中で一番格好良くて、
女の私がドキドキしてしまいそうな程、綺麗で……。
(なのに、何でかな……)
泣きそうになる。
夕陽を映しているはずの、翠色の瞳は何色にも染まっていない気がして……
時が止まったように、上手く息ができない。
「……ひまり?」
振り返った家康に名前を呼ばれて、私はハッとしてようやく息を吸う。
「お、遅くなってごめんねっ!」
「……そんなに待ってないから、気にしなくていい」
いつもと変わらない様子の家康に、私はホッと胸を撫で下ろす。
「……ちょっと、寄り道するから」
「う、うん」
家康が寄り道なんて意外だな、と思いつつ私は肩を並べて歩き始める。
夕暮れの城下町を歩きながら昼間見た光景をふと思い出す。
(私達も恋人同士みたいに、見えるのかな?)
そう思って、チラリと横目で家康の顔を盗み見る。けど、家康も何故かこっちを向いていて、バッチリと瞳が合った。
「もしかしてっ!な、何かついてたっ!?」
あんまりにもジッと見るから、もしかして、さっき食べたお団子でも付いてるのかと思った私は、慌てて手を口元に移す。
「……ぷっ。ってことは、何か食べたんだ」
家康は肩を震わせながら、笑い出す。
滅多に見せない笑顔に、さっき見た光景の不安は更に無くなって、私は頬を膨らませながらも心の中は嬉しさでいっぱいだった。
こんな時間がずっと続いて欲しい。
心からそう思った。
なのに