第75章 約束の地へ 最終章 後編
「おめでとうございます!」
「お二人共、どうぞお幸せに」
集まった町の住人から祝福の声と拍手が上がり、すっかり周りに人が居たことを忘れていた俺達は、思わず顔を見合わせ顔を赤らめながら笑い合う。
「今日はめでたい日だからな、遠慮せず食ってくれ」
政宗さんはそう言うと、机の上に被せてあった風呂敷を取り、ズラリと並んだ料理を集まった全員に振る舞っていた。
「家康さん、ひまりさん、この度は本当におめでとうございます!」
「ひまりちゃんも、祝言の日取り決まったんだよね?おめでとう!」
すっかり団子屋の娘と仲良くなったひまりは、嬉しそうに笑う。
「また、お二人で店に足を運んでいただけると、私達夫婦も嬉しゅうございます」
「あぁ。また、近々邪魔すると思うから」
「また今度、家康の昔話聞かせて下さいね?………ちょっ、痛いよーっ!」
呉服屋の亭主から、仕切りに俺の昔を聞き出そうとするひまりの頬を、軽く引っ張り注意。
「ひまり、お前には特別にある物を用意してある。とりあえず座れ」
政宗さんは俺達を真ん中にある御座の上に座らせ、大きな包みを開けた……
「あっ!!……もしかしてこれっ!?」
「佐助に作り方を聞いてな。流石に来世と同じ材料はないが、玉子と牛の乳さえあれば何とか作れた」
大好物なんだろ?
ひまりは目を輝かせ、一口くちに運ぶ。
「……ん〜っ!やっぱりケーキだっ!政宗……すっ、…ごい……美味しい」
「そうか。……泣くほど美味いとは予想外だったな」
パクパクと食べながら、涙を流し頬に手を添えひまりは幸せそうな表情を浮かべる。