第74章 約束の地へ 最終章 中編
また、一歩踏み出し……。
この数ヶ月の出来事が頭に浮かぶ。
この世界に来た日のこと。
皆んなに出会った日のこと。
また、一歩。
家康の御殿で暮らした日々。
安土城で皆んなと過ごした日々。
また一歩……。
沢山泣いた日々。
皆んなが励ましてくれた日々。
元の世界に返された日。
この世界に戻って来た日。
一歩ずつ家康に近づいて行く……。
最初は本当に素っ気なくて、厳しくて……頑なに閉ざした心は、見えなくて……でも、少しずつ本当に少しずつ……心を見せてくれて……私の心も同じように変化していった。
淡い恋心は、自分でも気付かない内にどんどん大きくなっていって……想いを寄せた後でも、決して止まることはなかった。
いっぱい辛い思いもした。沢山泣いて何度も、心が壊れそうになった。
でもその分、いっぱい幸せを貰った。
沢山笑って、どんどん強くなっていった。
「ひまり」
「家康」
信長様は家康の前まで来ると、
私の手を取りそっと差し出す。
「……約束どおり、くれてやる」
必ず、ひまりを幸せにしろ。
家康は私の手を信長様から受け取り……頭を下げる。
「……ありがとうございます」
必ず、ひまりを幸せにします。