第74章 約束の地へ 最終章 中編
「ここからは、俺の役目だ」
秀吉さんの手を取り馬を降りると、目の前に正装した信長様が現れる。
「信長様……その格好…」
「貴様の世の祝言は、『ばーじんろーど』とやらを歩くのであろ?」
(え………)
信長様の言葉に私は止まる。
けれどその意味が解った瞬間、熱いものが込み上がり……。
(まさか……)
「ならば、その役目は俺しか出来ぬからな」
貴様の父親として。
信長様が私に手を差し伸べ、そう言うと……野原に溢れかえった人が横に移動して、赤い絨毯の道が現れる。
その先にある「約束の地」と書かれた石碑の前に家康の姿が見えて……一気に身体が震え出し、視界がぼやけた。
「……ひまり、泣くのはまだ早い。折角着飾った姿が家康に見せる前に、台無しなるぞ?」
「っ……、はいっ」
私は返事をして信長様の腕に、自分の手を絡ませる。
「参るぞ」
信長様の合図に、私は一歩足を前に出す。