第10章 はぐれた心の先に…(1)
その頃、安土城では……
「……何が仰りたいのか、解りません」
急な呼び出しだと聞いて、嫌な予感は少なからずしていた……だが、まったく予想を遥かに超える話に、俺は苛立ちを隠せない。
今なら、ひまりの同行を控えさせた理由がわかる。
「頭の良いお前なら、十分に理解出来たであろう?」
「……頭では理解出来ても、意味の理解が出来ない要求には呑めません」
「ほぅ。それはつまり、誰か好いておる奴がいるとゆう事か?」
ニヤリと口の端を上げ、聞いてくる目の前の第六天魔王に俺は立場も忘れ、鋭い目を向ける。
「…………」
誰の事を言ってるのか、自分自身が一番理解している。だから、俺はあえて口を閉ざした。
「肯定も否定もなし、か……」
黙り込む俺に、意味深にそう呟くと容赦無い言葉を続ける。
「とりあえずお前が理解しようとしまいと俺には関係ない。自分で如何にかしろ……そもそも今回の件は、ほぼお前が蒔いた種だ」
「……それぐらい、解っています」
「浪人達の黒幕も突き止めた今、もうひまりがお前の側に居る必要もなくなった。今夜中に戻せ」
「……っ…了解しました」
この人の命は絶対だ。何一つ反論出来ない俺はギリっと奥歯を噛み締めると、その場を後にする。
「……信長様。本当にあれでよろしいのですが?あの二人が少なからず想いを寄せている事にお気づきなのでは」
ただ、黙って二人のやり取りを見守っていた秀吉は家康が去った後、痺れを切らしたように声をだす。
「……いつまでも、はっきりしないのが悪い。今のあいつに、ひまりを預けていてはまともな判断も出来んだろう」
「しかし、この時期に政略な婚姻を結ばすのはっ」
「俺は別に結べとは言ってない。ただ、同盟を考んがえるならそれが条件だと言っただけだ」
それを決めるのはあいつだ……
武功を取るか、
それとも……