第72章 約束の地へ 後日談(10)
「な、何も……ちょっと、壁ドンってなって……顎クイ……って……」
「壁どん……顎くい……?」
「つまり、壁にドンッ!と手を突かれ逃げ場を塞がれ、顎をクイッ!と持ち上げられ迫られたと言うことです」
「さ、佐助君っ!そんな説明今はしなくていいよっ!」
まるで見ていたかのように、佐助君の的確なシュチュエーションの説明を聞いた家康は、一気に表情を凍らせる。
「……覚悟しなよ?」
「だ、だって……あの時はまだ、記憶が戻ってなくて……その……!」
「ひまり流石に今回は庇ってやれない」
「まぁ……恐らく未遂で終わったんだろうが、こうなった家康には何言っても通じないぞ」
秀吉さんと政宗は哀れむように、私の肩を叩く。
「壁どん、顎くい……何だか美味しそうな言葉ですね」
「三成、今日はボケが、やけに冴えておるではないか」
「なぁ、佐助。あいつら本当に明後日祝言挙げる気なのか?」
「マリッジブルーに浸るより、少しは刺激があって良いと思う」
「……どうでも良いが、貴様ら痴話喧嘩なら他所でやれ」
もしかして
これは
意地悪で
捻くれ者の
天邪鬼な
神様から
最後の
天罰
だったのかも……?