第72章 約束の地へ 後日談(10)
とりあえず私は部長に説明。遠い所にお嫁に行くことなり明後日には結婚式を挙げることと、体調の方も安定してきたことを伝える。
するとさっきとは打って変わって部長は優しい声に戻り、部署内の皆んなにその話を報告するような声が聞こえてきて。
「ひまり!おめでとう!」
「もうっ!一人で勝手に決めて……何でも相談してくれたら良かったのに」
「あんまり調子乗って、大好物のケーキ食べ過ぎないようにね!」
「ぼっーとして、転ばないように気をつけるんだよ!」
「幸せにね!ひまりを泣かしたら私達が許さないからって、旦那さんになる人に言っといてね!」
「皆んな……あ、りがとっ」
次々に電話越しに聞こえる友達の声に、
私は涙を必死に堪える。
「途中で退場になったから、審査対象にはならなかったんだけど」
「ひまりの制作衣装、凄い評判良かったんだよ!」
「部長も、ひまりの腕ならどこに行っても大丈夫だって!」
「だから、夢も諦めちゃ駄目だよ!
「……うんっ!」
皆んなの言葉が本当に嬉しくて、やっぱり涙が溢れそうになった時、後ろからそっと家康の腕が伸びてくる。振り返ると、家康は優しい顔で私の涙を拭き取ってくれた。
けれど……。
「ひまり」
その声を聞いた瞬間、家康の手がピタリと止まる。