第10章 はぐれた心の先に…(1)
「別に幸だけでいーって。それよりお前、あの御殿から逃げ出してきたのか?」
「ち、違うよっ!ただ、ある人の用事が終わるまで、一人で時間潰してただけっ」
あえて、家康の名前は伏せて私が説明すると、幸は考え込むように黙り込む。けど、しばらくするとまた何もなかったかのように話し出した。
「まぁ、とりあえず暇ってことだな?なら、ここで会ったのも何かの縁つーことで、団子でも食いに行こうぜ」
「でも、あんまり遠くには行くな、って」
「そんなに遠くねーから、大丈夫だろ?さっさと、行くぞ」
幸は、早くしろと言いながら後ろ向きに手招きする。
(佐助くんの友達みたいだし、大丈夫だよね)
少し悩んだ後、
私は静かに後をついて行った。