第70章 約束の地へ 後日談(8)※R15
「ひまりは可愛くて、美人ですぐ男を虜にするから気をつけて」
少しでも解って欲しくて、滅多に面と向かって言えない心の声を、俺は口にする。
「って、毎日言ったら自覚してくれる?」
自分で目元が一気に熱くなるのが解る。
「そ、そんなの家康が贔屓目で見てるだけでっ///……そ、それに毎日そんな事言われたら」
(……全然、贔屓目じゃないんだけど)
手の隙間から一瞬見えたひまりの顔が、赤く染まっていて……そう恥ずかしそうに言った後、潤んだ瞳が俺を捉えた。
「心臓なんか、すぐ壊れちゃうよ!」
その言葉を聞いた瞬間、俺の我慢の糸が切れ触れたくて堪らなかった赤い唇に噛み付く。
「んっ……」
お仕置きのつもりで、ひまりが触れて欲しがる姿にずっと気付かないフリをしていた癖に、結局俺の方が限界だった。
角度をかえ貪るように口付けを繰り返すと、ひまりは俺の首元に腕を絡ませ深く求めてくる。
「……いえや…す」
その先の熱をねだるように俺の名前を呼ぶ姿を見て、頭の中が壊れたように理性が一気に飛ぶ。
俺はもっとその顔が見たくて、ひまりの髪を両方の耳にかけ、指先で耳飾りに触れた。
シャランッ……。
「……仕方ないから、許してあげる」
俺が我慢出来ないから。
耳元でそう囁けば、ひまりはますます色香を増し、トロンとした瞳で俺を見る。
身体が一気に火照り、
「ひまり」
《ガタッ》
名前を呼びその場にひまりを押し倒す。
勢い良く文机が倒れようが、その上の書物が散らばろうが、どうでも良かった。
俺は羽織を脱ぎ捨て、ひまりの肌に手を伸ばした。