第68章 約束の地へ 後日談(6)
「痛っ!誰だてめぇっ!」
「あぁっ!!?」
シュッ!!
ゴンッ!
「いづっ!!!」
突然聞こえた声に男達が反応して振り返った瞬間、物凄い勢いで林檎が一人の男の顔面に命中した。
(この声……もしかしてっ!!)
私はその声を聞いて、女の人の肩越しに姿を確認する。
(やっぱり!!)
男たちを睨みつけているのは、間違いなく……私が会いたくて堪らなかった人。
「い、え…『家康っ!!』」
(え………)
私が家康さんの名前を呼ぶ前に、
女の人が先に名前を呼ぶ。
「……俺にそんなに殺されたいの?ささっとひまりから、離れろっ!!」
(……っ!!)
背筋が凍りつくぐらい、殺意のこもった家康さんの声を聞いて、私は悟る。目の前に居る女の人が、家康さんの許嫁のひまりさんなのでは……と。
「てめぇ、よくもっ!!」
「あん時の借り返してやるよっ!」
「やれっ!!」
男たちは一斉に家康さんに飛びかかる。
「……チッ、雑魚が」
家康さんは舌打ちするのと同時に、攻撃を全てかわし男たちの身体に拳を振り上げ、足で素早く蹴りを入れ……あっという間に男たちは、林檎のように地面に転がり蹲った。
「弱いくせに、よくもひまりに……」
まるで人格が変わったように目を血走る家康さんは、蹲る男たちにゆっくり近づく。それを見て、女の人は慌てて駆け寄る。
「家康!私なら大丈夫だからっ!もう止めてっ!」
腕にしがみつく女の人。
すると家康さんはハッとしたように、瞳がいつもの綺麗な翠色に戻るのが見えた。