第66章 約束の地へ 後日談(4)
(帰り道……安土組)
「それにしてもひまり様、本当にお美しいお姿でしたね」
「家康も流石に驚いて、最初固まってたしな」
「……まぁ、とりあえずはこれで一件落着だな」
三成と政宗の会話を聞いて、世話好きの秀吉は安心したように息を吐く。
「戦に参っても、子作りだけはかかさんとは……家康もなかなかやる」
「光秀、あまり二人をからかうなよ。折角再会出来たんだ、見守ってやらないとな。しかし……早めに祝言を挙げる必要がありますね」
秀吉は俺の方に馬を寄せる。
「……ひまりが戻った際は、家康に祝言を挙げるなり好きにしろと言っておいたからな」
「新居の城も完成したようですし、恐らくそちらで準備を進めるのでは……ないかと」
馬に乗りながら、俺は佐助と以前した話を思い出す。
ーー俺達の世界で祝言はまず、二人で愛を誓う儀式を行い、その後……親族や友人と共に食事を楽しみながら披露宴を開くのが一般的です」
ーー……来世は、妙な祝言を挙げるのだな。
ーーこの時代の祝言みたいに、特に決まったしきたりなどはありません。
女性にとって祝言は大切な日です。
彼女にとっても……。
(いくら向こうの世を捨てたとは言え、少しばかりは未練があっても可笑しくはない)
しかし、養女とはいえひまりは正式な織田家の姫であり、家康は徳川家の主でもある……。家康も恐らくそのつもりで、格式のある祝言を挙げるつもりであろう。
(……ならば)
「城に戻ったら、話がある」
俺はその場にいた奴らに、後で集まるように告げると馬の手綱を取り、颯爽と駆け出した。
(相変わらず、手の掛かるやつらだ……)
酒が入った身体にほどよい風が吹き付ける。城の門を潜る頃には酔いもすっかり、醒めていた。