第67章 約束の地へ 後日談(5)
向こうの世界に居た三カ月の間……。
誰かのぬくもりを感じながら眠る事も、目覚める事もなかった。だけど……今は。
「……んっ」
「ひまり」
こうやって大好きな人の腕の中で優しい声を聞きながら……朝を迎えれるなんて……。
ほんと。
「……し、あわ……せ」
「……寝ぼけてるし」
頬っぺたが、ふにふに動く。
「……ん」
唇に柔らかい感触が降りてぼんやりした意識の中、腕を伸ばす。
「……もっ…と」
「……っ!!」
「んっ……っんんんっ!!」
口の中に生柔らかいものが滑り込む。呼吸がだんだん薄くなり、微睡んでいた意識がはっきりして目を開けると……短い音を立てながら唇が離れた。
「……朝から襲われたいの?」
家康はゾクッとする程甘い声で囁いた後、ゆっくり私の身体のラインをなぞる。
「っ!!ご、ごめんなさい///寝ぼけてました!」
「……寝ぼけてたじゃ済まない。俺じゃなかったらどうすんの」
家康は眉を顰め、そう言いながら私のほっぺを両手で軽く引っ張った後、おでこをコツンと当てる。
「ちゃ、ちゃんと家康なのは解ってたよ?」
「……解ってたよ?」
「解ってました!」
そう答えると、家康は少しだけ納得がいかないような表情を浮かべながらも、私のおでこに口付けをしてから起き上がる。
「……今日は仕事で少し遅くなると思う。でも、なるべく早く戻るから」
(……着いて行きたいけど、邪魔しちゃ駄目だよね)
離れていた期間が長かった分、余計に淋しくなって思わず家康の着物の袖を掴む。
「……明日は信長様に城に呼ばれているから、一緒に行こう」
だから、今日は待ってて。
家康の声から同じ気持ちなのが伝わってきて、嬉しい。
「うん!ワサビと一緒に待ってるね」
私は笑顔で返事をした。