第65章 約束の地へ 後日談(3)
俺がまだ学生だった頃___
図書館で、友人と一緒に勉強するひまりさんの姿を、何度か見かけた。窓辺で他愛のない話をしながら、柔らかい声で笑う彼女に、何故か目が離せなかったのをよく覚えている。
ーーねぇ、ひまりはどの戦国武将が好き?
ーーえっ?戦国武将??
ーー今回のテスト範囲、ちょうどその時代でしょ?
ーーあんた歴史苦手だからさ、タイプの戦国武将がいたらちょっとは覚える気になるかなぁ〜と、思って。
ある日、そんな彼女達の会話が耳に届いた。
幼い頃から歴史に興味を持っていた俺は静かな館内で、微かにボリュームを上げた彼女達の声に聞き耳を立てていた。
ーーう〜〜ん、なら私は……徳川家康!!
ーーなるほど〜で、で?理由は?
ーー平和な江戸時代を築いた人だからっ!
ただの偶然かもしれない。
たまたまその時の流れで、
彼女がそう答えただけかもしれない。
でも彼女が、家康公と抱き合っているのを見た時、思った……。
「……きっと、こうなる運命だったんだよ」
「あぁー。頼むからお前の口からそんな小っ恥ずかしい台詞聞かせるな!」
幸村は俺の肩を組み、ニヤッと笑う。
「今夜はとことん、晩酌付き合ってやるよ!」
自分が、飲みたいだけじゃないのか?と思いつつ、俺達は歩き出す。ワームホールの力が弱まったのは、彼女の身体に負担を掛けさせないように何かの力が働いたのかもしれない。
……俺が予測もできない力が。
(ひまりさんの周りには、俺には計算できないような……可能性が広がっている)
俺はこれからも友人として彼女の側にいようと……夜空に光る星を見ながら、誓った。