第64章 約束の地へ 後日談(2)※R18※
「実はね、あの衣装を着る前は……この世界に戻るの諦めてたの」
(え………)
思いがけないひまりの言葉に、身体が強張る。
「もしかしたら、家康にはもう素敵な人が居るかもしれない……もしかしたら、もう私の事は忘れてるかもしれない。そんな風に考え出したら、怖くなって……家康に私のこと信じて、って言っておきながら本当に勝手だよね」
でも、あの時の私は不安で仕方なかった。ひまりはそう言った後、ゆっくり振り返る。
「でも、あの衣装着て色んな事を思い出して……気付いたらその場から走りだしてた」
自分の気持ちに嘘なんて、吐けなかったの。涙ぐんだ声。その声に心配になった俺は更にひまりを抱き締め、言葉の続きを待った。
「会いたい。家康がくれた大切な命のこと伝えたい。偽りない私を見て欲しいって……だから」
ひまりはそう言って俺の胸にしがみ付き上目遣いで、見上げる。
「だから、困るの……私の方こそ家康のお嫁さんに……して貰わないと……」
一旦区切られた言葉。
「私の全部、貰ってくれなきゃ……私が、一番困るのっ!」
(っ………!)
それを聞いた途端、俺は腕の中にひまりを再び閉じ込め唇を奪う。
「んっ……」
「何でそんなに、可愛いこと言うの」
「……そんな、つ……んんっ!」
「俺の心臓止まったら、どうすんの」
「はぁっ……ちょっ…まっ…んっん!」
「大体、俺ひまり以外は無理だし」
「っは……い、えやんんっ」
俺は喋りながら、角度を変えひまりが話す前に唇を奪う。流石に耐えきれなくなったのか、ひまりは俺の胸を叩き、唇が離れると同時に、乱れた呼吸を一生懸命整える。
「……はぁ、っ……もうっ!!私のが心臓止まっちゃうよ!」
「可愛いことばっかり言う、ひまりが悪い。……でも、身体は大事だから」
俺はひまりを抱き、褥の上まで運ぶと優しくその場に降ろす。