第62章 約束の地へ(17)
「ひまり……」
ゴシゴシと目を擦る私の手を、家康の手が優しく止める。
そして、掴んだ手を家康はそのまま自分の口元に運び……畏る。
「……もう、絶対に離さないから。もう絶対に疑ったりしないから。もう絶対に辛い思いはさせないから……」
初めて想いを伝えてくれた時みたいに、家康の真っ直ぐな瞳と真剣な声が届く。そしてそれが私の心を全部。全部を一瞬で捉えてしまう。
「俺と一緒に生きて……ずっと俺の側に居て欲しい」
だから……。
まだ続く家康の言葉。
「……俺のお嫁さんに……なって下さい」
次の瞬間、その言葉にあれだけ止まらなかった涙が、嘘みたいに止まって……やっと私から笑顔が戻る。
「………はいっ!」
私がそう元気よく返事をすると、
家康はホッとしたように
優しい笑みを浮かべ……
触れていた手がそっと離れた。
家康は指先で残った涙を拭き取ると、そのままなぞるように私の顎に移動する。そんな細やかな動作さえ悔しいぐらい素敵で……今度はドキドキが止まらなくなる。
「ひまり。……愛してる」
甘い囁き。その声に頭が犯されそうになりながら、近づいてくる家康を見て……私はゆっくり瞳を閉じた。