第61章 約束の地へ(16)
日が暮れた時___
「こっから先は、車では無理だなぁ……」
「ここで大丈夫です!本当にご無理ばっかり言ってすいませんでした」
私はお金を払い、タクシーから降りる。
「本当にこんな所で、誰か待ってるのか?なんなら、ここで待機してても……」
「携帯もありますし、ちゃんと待ってくれてますから……本当にありがとうございました!」
私は運転手さんに深々と頭を下げ、
石碑を目指して走り出す。
(私と家康が約束した場所……)
石碑はきっと、あの野原にある。
携帯の画面で地図を検索しながら、暗くなった夜道を彷徨う。
(もう少し明るかったら、花が見えるんだけど……)
道標を見失った私は、家康と歩いた城下町の事を思い出しながら、携帯の地図が案内する道を走り続ける。
(もうすぐだから、一緒に頑張ろうね)
私はヒールを脱ぐ。それからスリットが入っていない方のドレスの裾を持つと、必死に足を動かす。丸出しになった肩。その肩に衣みたいに薄い羽織り搔き合せ、夜風の寒さを誤魔化した。